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分娩における鍼治療
「産婦人科+鍼灸治療」というと、逆子治療や不妊症、
生理痛の治療などがよく知られています。
鍼やお灸で本当に治るのか、疑問を持つ人も多いと思いますが、
特に逆子治療などは短期間で効果があらわれ、
実際に施術を受けた妊婦さんは驚いています。
また逆子などの問題がない場合でも、安産に向けてお腹(子宮)を
やわらかくするために、妊娠期間中から鍼灸療法を取り入れる病院もあります。
鎮痛法としての鍼療法は、おもに慢性的な痛みの緩和を求める人たちに
多く用いられていて、分娩時の痛みの緩和(無痛分娩)を目的として使用される例は
まだ一般的ではありません。
しかし、妊娠以前に他の症状で鍼治療を受けたことがある女性や、
副作用の少ない無痛分娩法を望む女性から支持されている方法でもあります。
鍼療法は中国で古くから治療に用いられた手法で、
熟練した鍼師が細くて長い「鍼」をからだのさまざまな部位の皮膚に刺します。
「鍼」がどのように効くのかは、まだはっきりとわかっていませんが、
一説では、「鍼」の刺激によって、痛みを緩和する働きのあるエンドルフィンという
化学物質が筋肉や脳に分泌されるといわれています。
こうした内因性の鎮痛物質であるエンドルフィンの分泌によって、
陣痛の痛みもコントロールできるのではないかとされています。
陣痛が始まったら、なるべく早い時期から鍼療法を始めると効果的であるとされています。
陣痛時に鍼を刺すポイントは、腕や脚、耳、手、足首、腰などにあります。
鍼を刺す時には、ほとんど痛みを感じないか、感じてもわずかな痛みです。
通常、鍼は15分~40分ほど刺したままにしておきます。
十分な鎮痛効果は期待できないにしても、鍼を打つとリラックスできたとか、
エネルギーがわいてきた、という人もいます。
無痛分娩の体験談
有名人が無痛分娩で赤ちゃんを産んだ、という話が持ち上がったりして、
無痛分娩という出産法があることは広く知られてきました。
自分が妊婦でなければ「そんな方法もあるんだ」くらいで終わりますが、
もし妊婦さんであるならとても興味のある話だと思います。
あの不安でたまらない陣痛の「痛みが無い」というくらいの方法は
興味深く聞こえます。
現在、硬膜外麻酔法という無痛分娩が一般的ですが、
これは、陣痛に苦しまずに出産するためにはとても効果的であるといわれています。
しかし、実際の体験談を聞くと、単純に
「痛みを感じずに赤ちゃんを産むことができた」
という話ばかりではないようです。
たしかに、
「楽だった」
「程よい痛みが残っていて、産んだという実感が味わえた」
などの意見もあります。
以下にいくつかの体験談を紹介します。
「背中に打つ麻酔の注射はとても痛いと聞いていましたが、
チクッとしただけで思ったより痛さはなかったです。」
「自分では全くわからなかったのですが、陣痛の間隔が短くなっていたようで、
お医者さんの合図で無事に出産することができました。」
「無痛=全く痛くないと思っていましたが、陣痛の痛みをとるために
背中から管を入れるための注射が、大暴れするほど痛かったです。」
無痛分娩を終えての感想はさまざまで、分娩の時期を迎える前に、
どの程度、無痛分娩に関しての知識と理解があるかにもよるようです。
お医者さんから正確な情報を得て、広く体験談を聞き、
自分の出産をイメージしておくとよいかもしれません。
バースボール
分娩を行なう病院では、分娩時にリラックスして過ごすために
産婦さんが使う「バースボール」というものが置いてあるところがあります。
このバースボールも、麻酔薬による無痛分娩の代替医療として取り入れられています。
バースボールとは空気で膨らんだビニール製の大きなボールで、
フィットネスクラブやジムで見かけるものとよく似ていますが、
出産用にももちろん作られています。
従来、理学療法士によってリハビリテーション療法に使用されていたのですが、
最近では分娩時にも使用するようになってきました。
陣痛時に産婦さんがその上に座ると、揺れて体重移動が楽にできるようになります。
バースボールを使用することで、ベッド上や座っているときにはできなかった
楽な姿勢をとることができます。
バースボールは、これと決まった使い方はないのですが、
上に座るだけでなく、よつ這いのような格好でボールに寄りかかり、
ボールを抱きしめるように使う産婦さんもいます。
こうすると、腕や手、膝の緊張が軽減されます。
しゃがんだ姿勢をとる場合にもボールが支えになってくれます。
歩き回っても陣痛が楽にならないときは、バースボールを試してみるのもよいでしょう。
ただ、バースボールは姿勢の変化には柔軟に反応してくれますが、
安定性がなく転がりやすいので、ボールに座って揺れている間は、
バランスを崩さないよう、誰かに近くで支えてもらうほうが安全です。
また、硬膜外麻酔による無痛分娩を行なっている場合でも、
運動神経麻痺が軽ければ、誰かの手を借りてボールを使い続けることもできます。
使い方が簡単で副作用がないところもバースボールのよいところです。
妊娠高血圧症候群の治療
現在の無痛分娩の主流は、
麻酔薬を用いた硬膜外鎮痛法です。
この硬膜外鎮痛法が、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)を
抱える産婦さんにとって、分娩時だけでなく妊娠中の治療としても
有用であるということが報告されているそうです。
妊娠高血圧症候群とは、高血圧を主体として、
蛋白尿やむくみを伴う全身性の疾患です。
この疾患を抱える産婦さんでは、
赤ちゃんへの血液を送る血管でもある臍帯が細くなっているため、
妊娠中の赤ちゃんの発育が悪くなることが多いです。
硬膜外鎮痛法による無痛分娩では、このような時に、
血圧に影響の出ない程度の少量の麻酔薬で鎮痛を行なうだけで、
子宮への血流を含めた内蔵の血流を保つことができるのです。
これを妊娠高血圧症候群の治療に使う場合、妊娠の半ばから終わりにかけて、
陣痛も始まっていない時期に、硬膜外鎮痛法のための細い管(カテーテル)を
背中から入れ、麻酔分娩で用いるよりずっと少ない量の局所麻酔薬を
1~2週間にわたり少しずつ入れ続けます。
こうすることで高血圧が改善し、病的に低下していた血小板の数が正常になり、
赤ちゃんの発育にも改善がみられる、というのです。
数週間の間、体の中に麻酔薬が入ると思うと心配でしょうが、
入れるところはあくまで神経組織のまわりで、血管の中ではありません。
今までのところ、この治療による赤ちゃんへの悪影響はみられていないようです。
この新しい治療法に期待が持たれていますが、しかしながら、
血圧をコントロールできたとしても妊娠高血圧症候群の病態をする改善には
限界があることも理解しなくてはいけません。
陰部神経ブロック
陣痛の痛みというのは、
よく「痛みが段々下がってくる」と言われるように、
その分娩段階によって場所が移動します。
その移動する痛みを、脊髄の近くではなく、離れたところに局所麻酔薬を注入して
痛みを止めるというのはあまり効率的とは言えません。
しかし硬膜外麻酔法を用いた無痛分娩ができない産婦さんや、
脊髄の近くに麻酔薬を入れることに恐怖感を持つ産婦さんで、
それでも他の方法で少しでも痛みを止めたいという場合には、
陰部神経ブロックという方法があります。
陰部神経ブロックは、産婦さんが分娩台に乗った状態で、
産科医が膣と肛門の間に分布する神経に皮膚から局所麻酔薬を注射する方法です。
とても痛そうな処置のように聞こえますが、
陣痛の最中のためか、実際はそうでもないようです。
これにより、娩出時の痛みや会陰切開の痛みがやわらぎます。
陰部神経ブロックは、子宮の中の知覚神経に作用するわけではないので、
子宮収縮による痛みを緩和することはなく、膣や直腸付近の感覚を麻痺させるだけです。
そのため、効果を示すのは分娩の後期だけですが、
硬膜外麻酔による無痛分娩のように
「力が入らず、いきむのが難しい」ということはありません。
また、あまり多くは行なわれませんが、
分娩前半の子宮口が開くまでの間の痛みに対して、
傍頸管ブロックという方法もあります。
こちらは、子宮の出口外側の部分に数箇所、膣の内部から
局所麻酔薬を注射する方法です。
